十五夜の歴史とお供え物、「秋の七草」の種類について
月を見ながらお団子を食べる「十五夜」。 十五夜は秋の中でもっとも月がきれいに見える季節で、月の模様がくっきりと見えることから「うさぎが月で餅つきをしている」なんて話を聞いたことがある人もいると思います。
これは、空気が澄んでいるためで、その模様がまるでウサギが餅をついているように見えたことから、月にはうさきがいると言われるようになりました。
そこで、十五夜にはどんな歴史があるのか、十五夜の過ごし方、飾るお花などについて見ていきましょう。
十五夜の歴史について
日本では昔から月を神聖視していて、縄文時代には月を愛でる習慣があったと言われています。 十五夜が貴族の間で盛んに行われるようになったのは、平安時代と言われており、859〜877年頃に中国から伝わったとされています。
庶民の間で盛んになったのは江戸時代の頃だと言われています。月を見ながらお酒を飲んだり船の上で詩歌や管弦に親しむ貴族とは違い、庶民の間では、収穫祭や初穂祭として十五夜を楽しんでいたそうです。
十五夜が行われる時期は、稲が育ち、収穫が始まる時期でもあったため、無事に収穫できることを願い、こういった催しが行われていたそうです。
十五夜にお供えをするもの
十五夜にお供えをするものは、地域によって少し違いはありますが、「ススキ」や「月見だんご」、「農作物」などをお供えすると言われています。
お供えには1つ1つ意味があり、ススキは、秋の七草の1つとして魔除けになるという意味でお供えされていました。 月見だんごは、15個をピラミッドのように並べ、一番上のだんごが霊界との懸け橋になると考えられていました。 また、サトイモや栗、枝豆など、秋に収穫されたばかりの農作物をお供えし、豊作に感謝していたとも言われています。
十五夜には独特の風習もあり、「お月見泥棒」として、お月見のときだけはお供え物などを勝手にとってもいいという風習があるようです。 これにより、長崎などでは、子供がお供え物を自由に取ることが十五夜の風習とされています。 一方、秋田県の一部では、他人の家に片足を踏み込んでお供え物を取る、「片足御免」という風習があり、お月様がお供え物を食べたと捉えられている習慣もあります。
さまざまな地域でお供えものや風習は異なりますが、一般的なお供え物としてはススキや月見だんご、農作物などを供えるのが一般的です。
十五夜はいつ?
十五夜は中秋の名月とも呼ばれていて、秋の真ん中に出る月という意味もあります。 春は1〜3月、夏は4〜6月、秋は7〜9月、冬は10〜12月とされていたため、昔は8月の真ん中である15日が十五夜と言われていました。
しかし、現在は昔の時期とは少しずれ、9月7日〜10月8日までの間で満月が出る日が十五夜とされています。 2019年の十五夜は9月13日(金)、2020年は10月1日(木)、2021年は9月21(火)、2022年は9月10日(土)とされています。
丁度十五夜にあたる時期は、夜の気温が涼しくなり空気が澄んでいて月がきれいに見えることから、十五夜にはピッタリの季節と考えられます。
十五夜の天気が思わしくない場合はどうすればいい?
十五夜の日にお月見をするのがベストなタイミングですが、秋は気温が下がるにつれて雨が降ったり、雲が多くなって天候が思わしくないこともあります。
十五夜の天候が思わしくない場合は、十三夜や十日夜と言われる日にお月見をするのがおすすめです。 十三夜は旧暦の9月13日〜14日の夜のことを言い、大豆や栗などを供えることから豆名月、栗名月とも言われています。 十日夜は旧暦の10月10日を示していて、地の神様に感謝の気持ちを伝える日とされています。
こういった日にお月見をするのも縁起がいいと言われているので、十五夜の天気が悪いときは、十三夜や十日夜にお月見をしましょう。
秋の七草の種類と花言葉について
十五夜のお供え物としてはススキをイメージする人も多いのですが、昔は秋の七草を一緒に飾っていたと言われています。 十五夜の旧暦は7〜9月だったので、秋の七草には夏から咲く花も含まれています。
*秋の七草の種類
- ハギ
- ススキ
- ナデシコ
- キキョウ
- クズ
- フジバカマ
- オミナエシ など
ハギは草かんむりに秋と書くため、秋を代表する花として、お彼岸などにお供えをする花となっています。 花言葉は思案、内気、想い、前向きな恋、柔軟な精神などの意味があります。
ススキは、ススキの穂が動物の尾っぽに似ていることから、別名「尾花」と呼ばれることもあります。 お月見には欠かせないお供え物の1つとされています。 花言葉は勢力、生命力、活力、隠退、悔いなき青春、心が通じるなどの意味があります。
ナデシコは清楚さを表していて、可憐な淡紅色の花を咲かせ、「枕草子」の中では第1級品とされています。 花言葉は純愛、無邪気、思慕、貞節、才能、大胆、いつも愛してなどの意味があります。
キキョウの花の形は、武士の家紋に用いられ、中でも明智光秀の水色桔梗の家紋が有名です。 桔梗の根を乾燥させ、粉末にしたものは、痰や咳などの薬としても用いられています。 花言葉は清楚、気品、誠実、従順、変わらぬ愛、優しい温かさなどの意味があります。
クズは葛湯や葛切り、葛餅としてもなじみが深い植物で、葛の根を乾燥させた葛根は風邪や胃腸不良などの治療薬として用いられています。 花言葉は治療、活力、根気、努力、芯の強さ、恋のため息などの意味があります。
フジバカマは花の色が淡紫色で、弁の形が筒状で袴に似ています。 乾燥させると桜餅の葉と同じ香りがするため、洗髪や香水などにも用いられています。 花言葉は遅延、躊躇、思いやり、あの日を思い出す、優しい思い出などの意味があります。
オミナエシは花の美しさが美女を圧倒するという説があり、優雅で美しい花と言われていました。 そのため歌や句にも「オミナエシ」が使われることが多く、根と全草には解毒や鎮痛、利尿効果があると言われています。 花言葉は美人、親切、はかない恋、心づくし、約束を守るなどの意味があります。
十五夜では、上記であげた秋の七草をお供え物として一緒に飾り、楽しんでみてはいかがでしょうか。
秋の七草ってたくさんあって覚えにくい
秋の七草の種類はたくさんあって覚えにくいことから、頭文字の語呂を合わせて覚えるのがおすすめです。
代表的な覚え方は「おすきなふくは?」、「はすきーなおふくろ」です。 「おすきなふくは?(お好きな服は?)」は、お「オミナエシ」、す「ススキ」、な「ナデシコ」、ふ「フジバガマ」、く「クズ」、は「ハギ」となります。
こういった覚え方にすると、秋の七草が覚えやすくなりますよ。
このように、十五夜はお月見だんごやススキなど、秋の七草を飾って楽しむものです。 十五夜は地域によってお供え物や風習が異なりますが、一般的にはお月見だんごやススキ、農作物などをお供えします。 そして、秋の七草を家に飾り、秋を楽しんでみてはいかがでしょうか。
秋は紅葉のイメージが強いですが、十五夜の場合は、秋の七草で秋を感じることが出来るので、お花屋さんなどで秋の七草を探してみましょう。
きっと今までの十五夜よりも秋を感じることができ、華やかな雰囲気になると考えられます。 十五夜で秋の七草を楽しんだ後は、切り花としてお部屋に飾り、鮮やかできれいな花を楽しみましょう。